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土田 豊*; 海老原 健一
鉄と鋼, 103(11), p.653 - 659, 2017/11
被引用回数:2 パーセンタイル:11.25(Metallurgy & Metallurgical Engineering)低温昇温脱離解析によって得られた焼戻しマルテンサイト鋼の非常に薄い平板試料の水素熱脱離曲線に見られる単一ピークを2つのガウス分布の重ねあわせにより適切に再現した。さらに、ChooとLeeの方法を用い、それぞれのガウス分布から同定したピーク温度から、それぞれのピークに対応する水素トラップサイトのデトラップ速度定数に関するパラメータを算出した。水素拡散を無視した熱解離律則条件に基づくKissingerモデルに算出されたパラメータを組み入れ、水素熱脱離を計算したところ、それぞれのガウス分布のピーク形状を再現できることが分かった。また、同様に、算出されたパラメータを熱脱離解析に関する反応拡散方程式に組み入れ、またトラップサイト濃度を適切に設定して計算したところ、実験熱脱離曲線を再現することができた。これらの結果から、ガウス分布の当てはめで得たパラメータが妥当であることが確認され、また、2つのガウス分布に対応するトラップサイトが転位と粒界であると推定できる。
海老原 健一; 齋藤 圭*; 高井 健一*
「水素脆化の基本要因と特性評価研究会中間報告会」シンポジウム予稿集(USB Flash Drive), p.30 - 35, 2016/09
鉄鋼の水素脆化機構を理解するために必要な鉄鋼中の水素トラップ状態を推定するために、昇温脱離解析(TDS)で得られる水素昇温脱離スペクトルが用いられる。近年、水素添加しひずみを与えた焼戻しマルテンサイト鋼における空孔型欠陥の生成が報告されていることから、そのような鋼材の試料における空孔型欠陥が水素トラップ状態への影響を評価するため、空孔型欠陥が温度によって変化する過程を組み入れた昇温脱離モスペクトルの数値モデルについて検討した。結果として、空孔の拡散及び消滅の過程のみを取り入れたモデルは、実験スペクトルの空孔の昇温脱離ピーク付近にピークを再現するが、空孔のピークと転位のピークの間の水素放出を再現できなかった。そして、空孔クラスターの簡易モデルを考慮したところ、空孔ピークと転位ピークの間に水素放出が現れる可能性が見られた。しかし、実験スペクトルの詳細な再現にはいたらなかった。それは、空孔クラスターの簡易モデルによるものと考えられる。
沢井 友次; 芝 清之; 菱沼 章道
Journal of Nuclear Materials, 283-287(Part.1), p.657 - 661, 2000/12
被引用回数:43 パーセンタイル:90.73(Materials Science, Multidisciplinary)IEAヒートF82HをTIG及びEB溶接し、溶接後歪み取り熱処理(PWHE)を施した後、さらに550での時効を実施した。また、母材の時効を500~650の間で行った。PWHT直後の溶接継手の硬さ分布では、TIG,EBともに溶金部での硬化が認められ、EBではより顕著であった。一方、TIGの場合には明瞭な軟化部が溶接熱影響部に認められた。母材の顕著な軟化は650以上の時効温度で認められたが、硬化したTIG溶接金属は、550での時効でも軟化を示した。溶金部の電子顕微鏡観察の結果、550,3000時間の時効でも、析出物の発生は通常の母材よりかなり少なかった。X線回折によって定められたF82HのTTT線図では、Laves相の発生は550時効の場合は6000時間以上の時効時間が必要とされているが、電子顕微鏡観察では溶金部中には550での3000時間時効でLaves相の発生が見られた。炭化物発生が少ないために固溶W量が多いこと、Laves相の発生を押さえると言われるNbの濃度が低いこと、あるいは凝固時の偏析等、溶金部では母材に比してLaves相の発生による脆化を懸念させる要素があるが時効時間を10000時間に延長してもLaves相は、その成長が顕著でなく、時効温度550に関しては溶金部でのLaves相による脆化は影響が少ないと予測される。